名古屋高等裁判所 昭和25年(う)1846号 判決 1950年12月13日
被告人
中村栄助
外四名
主文
本件各控訴を棄却する。
理由
武藤弁護人の被告人木下豊、同後藤進のための論旨第一(二)について。
原審が被告人木下豊、同後藤進の原審弁護人のなした証人村瀨市郎の取調の請求を所論のように却下したことは記録上明らかであり、又憲法第三十七条第二項に所論のような規定の設けられていること及びその規定の解釈について所論のような最高裁判所の判例の存することは明らかなところである。而して刑法第四十二条第一項によれば罪を犯し未だ官に発覚せざる前自首したる者は其刑を減軽することを得と規定せられていて自首のあつた場合に其刑の減刑をすると否とは裁判官の裁量に委ねられており、自首減軽は常に必ず之をしなければならないものではなく、従つて自首は刑事訴訟法第三百三十五条第二項所定の法律上刑の加重減免の理由となる事実に該らないので判決において之に対する判断を示さなければならないことはない。よつて自首の主張事実に関する証人の取調の請求の採否は所論のように事実審裁判所の専権に属しないものとは解しえなく、従つて該請求を却下してもそれが右憲法の条項の趣旨に反するものとは解しえないので、原審が右証人の取調の請求を却下した事実を目して採証の法則に違反したものとは認めることができなく、論旨は之を採用しない。